都議会レポート2011/7

東京都の震災関連予算可決!民主提出の省エネ条例案も可決!

平成23年第2回都議会定例会が、7月1日に終了しました。

前定例会の終了日に起きた東日本大震災より4ヶ月近くが経ちましたが、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された方々のお見舞いを申し上げます。

今定例会では、震災に関連した補正予算と、今後のエネルギー政策が主な議題でありました。エネルギー政策においては、今こそ省エネに向けた確固たる理念を都議会から発信したいという思いのもと、省エネに関する条例案を提出させて頂き、21年ぶりの議員提出条例案可決に至りました。

都民の皆様には、本リポートにて私たちの政策と質疑の結果をご覧頂き、ご支援頂ければ幸いです。

大震災を踏まえ、東京の防災力を更に高めよ

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東日本大震災は、東京に震度五強の揺れと多くの混乱を生じさせ、東京の防災対策を見直す契機となりました。

都議会民主党は、東京で江戸期に三連動地震による大津波や、これに続く暴風雨などの複合災害が発生していることから、過去の災害分析から被害想定を研究すべきと都に求めました。帰宅困難者対策やライフラインの耐震化、減災化対策の推進、首都圏全体での大震災への対応なども訴えました。

また、福島第一原発事故を踏まえるならば、近い将来起こると言われる東海地震による静岡県浜岡原発の事故リスクも想定した放射能対策も行う必要があると述べました。

知事は、三連動地震も視野に入れた新たな視点での防災対応指針を策定すると答弁しました。

都議会民主党は、発災時における社会対応力の強化や防災リーダーの育成などに一層取り組み、東京を災害に強い、持続可能な都市としていきます。

原発の安全性は!? 石原知事に見解を問う

石原知事は過去に「東京湾にも原発を」と発言し、今回の福島第一原発事故が深刻化した3月25日にも、「私は原発推進論者です。今でも」と述べています。

私たちは、現下の状況では、原発は東京湾はおろか、他の自治体においても新たに建設することは不可能であると考え、改めて、原発の安全性に対する知事の基本認識を問いました。

知事は、これまでの原子力行政の姿勢を反省・再考すべきと述べ、「東京湾にも原発を」発言については、「完全な管理技術を前提とすれば当然のこと」「日本の心臓部の発展を考えれば、その電力を他に依存し続けることは不合理」と述べ、また、今後の都のエネルギー戦略については、天然ガスの発電所建設に向けた取り組みと、節電の徹底を行うと答えました。

都民や事業者、従業員と帰宅困難者対策を共有せよ

震度5強を記録した東京都心部は、交通機関の運休によりターミナル駅に多くの人が滞留(たいりゆう)し、幹線道路は、大渋滞を起こしました。

このため、都議会民主党は、事業者に従業員の一斉帰宅を控えるための備蓄や、正確な交通情報の入手方法、家族の安否確認方法を示す啓発事業が重要と求めました。

また、より大規模な地震に備えて、安全確認された大型商業施設などでの来訪者・従業員の一時待機や交通機関による避難誘導や輸送協力ネットワークの構築、来訪者などの避難も含めた避難所の運営など、被災者の安全確保に向けたエリアマネジメントを考えるべきと訴えました。私たちは、民間の帰宅困難者対応訓練と連携するなど、諸課題への対策を多くの人々と共有し、対策を実効性あるものとしていくべきと考えています。

東京の液状化予測を見直せ!

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今回の大震災による長い揺れは広範囲にわたって地盤の液状化を引き起こし、千葉県浦安市を初め、東京においても、江東区、江戸川区など湾岸地域の7区で液状化被害が報告されています。

都議会民主党は、都の予測図で液状化の発生が少ないとされていた地域においても液状化被害が出ていることから、被害の実態を調査・検証の上、改めて都の液状化予測図を見直し、都民に示していくべきと訴えました。

都は、新たに実施する地質調査の結果を用い、専門家などの意見も聴取しながら、来年度末を目途に予測図を見直すとしています。

災害時に都民の生命を守る燃料の安定確保の推進を

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東日本大震災により6ヶ所の国内製油所が被災したため、東北地方や首都圏は燃料の供給不足に陥り、被災地への救援物資輸送車や医療機関などでも燃料確保が困難となりました。

都議会民主党は、石油業界との包括的協定だけでは、優先度の高い事業者などへの供給が難しいと考え、大規模災害時、優先車両・施設へ燃料を安定供給できる仕組みの検討を求めました。

都は、国や自治体等の役割分担も含め幅広く検討し、今秋の防災対応指針で方向性を示すと述べました。

被災者が真に必要とする支援を 今後も継続的に取り組め

未曾有の複合災害、東日本大震災に対していち早く、都議会民主党は、被災地支援と都内の震災対策を充実させる補正予算の編成を知事に申し入れました。また、各議員は党の被災地支援活動やNPOとの連携など被災地支援に取り組んできました。

都議会民主党は、被災地が取り組むべき課題は山積し、日々刻々、地域ごとに状況が変化していることから、被災地のニーズを的確に把握し、被災地・被災者が真に必要とする支援に今後とも都が継続して取り組むべきと求めました。

知事は、岩手、宮城、福島の3県に現地事務所を設置し、必要な物資の搬送や医療・福祉スタッフの派遣などの支援を行うとともに、今後とも復興に向け自ら踏み出す被災地・被災者を強力に後押ししていく決意を述べました。

避難者のくらしを支える取り組みを充実せよ

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都内には福島県などから自主避難してきた約5千名の避難者の皆さんが都営住宅などに仮住まいをしていますが、故郷から離れた生活は不安なものであります。

都議会民主党は、避難者同士や地域との交流機会の創出や、総合的な相談を広い協働のかたちで行うことが重要と考え、コミュニティにも配慮した避難者支援の取り組みを都は行うべきと訴えました。

それに対し、都は被災地情報の周知で被災自治体との連携を強化し、孤立化防止事業の実施などにおいて、関係機関と協力すると答えました。

省エネ条例を提案・可決!

私たちは、東日本大震災の経験を踏まえ、今後は、平常時は省エネ、CO2削減を図りながら、非常時には独立型のエネルギー源を確保し、災害に強く環境負荷の少ない都市づくりを推進することが必要不可欠であると考えています。そのために、「東京都省エネルギーの推進及びエネルギーの安定的な供給の確保に関する条例(案)」を提案しました。

条例案は、東京都、並びに都民、事業者の責務を明らかにするとともに、基本理念などを定める内容とし、家庭、学校、会社、社会全般で省エネに対する意識の向上を図ることを目的としたものです。

環境・建設委員会に付託され、可決された後、本会議の採決では、自民・公明党が反対し可否同数となりましたが、議長決裁の結果、可決へ。議員提出条例としては、21年ぶりの可決となります。

中小規模事業所の省エネ化支援を強化せよ

平年夏季ピーク時の電力需要の内訳は、家庭・業務・産業の各部門のうち、オフィスビルや商業施設などの業務部門が全体の約4割と最も大きく、空調と照明が大半を占めます。

特に中小規模事業所では過剰な冷房・換気や明る過ぎる照明などで節電の余地が大きいことが明らかになっており、その対策が効果的であります。

このため私たちは、中小規模事業所の省エネ化推進のためには、現在実施されている、環境確保条例に基づく地球温暖化対策報告書制度のより一層の効果的活用や、中小事業所の省エネ設備導入促進のための各種制度の情報提供及び相談窓口の一本化と、制度の周知徹底に向けた取り組みが必要と主張し、都も前向きに取り組むことを表明しています。

都関連施設で率先した省エネ化を!

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都は未曾有の事態を受け、民間事業者に先駆けて一層の省エネ化が求められていますが、都は既に、2007年より、都関連施設の改修の際に用いる建築仕様を省エネ仕様に改めており、今後大規模改修を予定の施設については、この省エネ仕様が適用されます。

私たちは、既に省エネ仕様で改修された施設と、今後改修が予定されている施設以外の都関連施設の省エネ化も必要と主張しました。

都は、当面改修予定のない施設も省エネ化に取り組み、今年度は300施設に需要電力監視装置を設置するほか、照明のLED化の推進等を実施すると答弁しました。

再生可能エネルギー導入こそ都は行政として支援せよ

石原知事は、再生可能エネルギーの導入について、「そんなものだめだ。コストがかかって、出力がなくて、コストパフォーマンスがだめだ」と発言するなど、原子力に代わる産業用の代替エネルギーとしては否定的な見解を繰り返し述べています。

しかし私たちは、中長期的には、できるだけ再生可能エネルギーにシフトすべきであり、採算ベースに乗りにくい再生可能エネルギーの導入こそ、都が行政として積極的に支援すべきと考えています。

都は、今後再生可能エネルギーの飛躍的な導入拡大を実現するには、国の全量買取制度が速やかに開始されるとともに、その買取価格や期間について採算が取れる水準を担保する必要があるとの認識を示し、国に対する働きかけを行なっていくと答弁しました。

エネルギー利用効率高い地域冷暖房施設整備を

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電力の安定供給や、効率的な消費の仕組みづくりに、地域冷暖房施設に発電機能を付け加えることが考えられます。現在、都内にある地域冷暖房施設77箇所のうち、発電機能を備えた施設は1箇所のみ。普及には、初期投資額への助成に加え、維持管理コストの負担軽減、関係法令の規制緩和など、総合的な検討が必要です。

都は、こうした課題を踏まえ、関係機関と連携しながら都市開発に関わる民間事業者の取り組みを促進するなど省エネルギー型都市の実現を目指すとしています。

学校の節電教育ではインセンティブ付与を

家庭での節電は、都民がまとまって取り組めば、高い効果が期待できます。そのため、参加意識を高める仕組みづくりと、なるべく早い取り組みが必要です。

中でも子どもの節電意識が高まれば、それにつられて親も取り組むと言われています。都は電力対策緊急プログラムにおいて、都内の公立小中高・特別支援学校で節電アクション月間を実施するということで、既に省エネ教育を通じた家庭での省エネ意識の啓発に取り組むことを打ち出しています。

私たちは、学校予算や生徒会予算を増額するなど学校エコポイント制度の導入を提案しました。都は、都立学校施設での児童・生徒の省エネ意識を高め、実践につなげるために、効果的で創意工夫のある節電の取り組みに対する顕彰を行なうと答弁しました。

都立学校の防災機能強化と運営体制の整備を

震災時、都立学校は帰宅支援ステーションの役割を担いますが、3月11日の震災当日、多くの学校では、食料、毛布等の備蓄が生徒の分しか用意されておらず、対応が不十分だったことや、多くの教職員が不眠不休で支援し、疲弊していた状況もありました。

そこで、今後起こりうる首都直下地震に備えるためにも、備蓄品の充実による防災機能強化と、教職員の校内や自治体との間の役割分担の明確化を訴えました。

教育長は、備蓄品の拡充とともに、電源確保のための自家用発電機等を設置していくと答弁しました。また、教職員の役割については、都立学校が取り組む課題の検証等を通して、現在既存のマニュアルの改訂作業を行っており、今後、教職員の対応など運営体制の整備を図っていくと述べました。

防災教育の充実を図れ!

岩手県釜石市では、東日本大震災の津波襲来時、学校管理下にあった小中学校の児童生徒から1人の犠牲者も出さなかったという奇跡を起こしました。その奇跡の一因として、市内の学校がこれまで防災教育に積極的に取り組んできたことが大きく影響したと言われています。

そこで、全国で唯一、環境防災学科のある兵庫県立舞子高校を例にとり、防災の専門学科開設によって、先進的な防災教育の取り組みを推進するなど、都立高校の防災教育を充実すべきと訴えました。

教育長は、学科開設の検討については直接言及しませんでしたが、災害の歴史など、高校や学科の特色に応じて学習を一層深めるとともに、救助体験などの体験的な防災教育を拡げていくことで、地域社会の安全確保に貢献できる人を育成していくと答弁しました。

制度融資や自家発電導入で中小企業の負担軽減を

都議会民主党は、被災直後の3月14日に「新たな融資制度の創設を含めた、万全の中小企業対策」などを求める要望書を提出し、石原知事も、知事選の選挙公約で「安心・安全な制度融資『東京セーフ』の創設」を掲げていました。

今回の補正予算では、融資目標額が過去最高レベルになるとともに、すべての事業者に対する保証料の2分の1補助の実現や、直接被害を受けた都内中小事業者に対しては、利子の一部を補助することも打ち出されました。

また、中小企業に対する自家発電設備の導入では、国の補助金との棲み分けや燃料の安全管理に向けた企業へのサポートなど、キメの細かい対応を求めてきました。

都議会民主党は、引き続き、中小企業の負担軽減に向けて、取り組んでいきます。

医療機関の耐震化で震災時に機能する体制を

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医療機関の耐震化等に対して、従来、救命救急センター等のごく限られた部分にのみ補助がありましたが、今回、対象を全病院に拡大する補正予算が提案されました。

これは一歩前進ですが、さらに求めると、地域の医師も診療を続けられ、避難所等での保健や予防活動も迅速に行われるような体制整備が必要と考えます。そこで、今後都が目指す災害時の医療提供体制について問い質しました。

都は、今後、拠点病院と地域病院の連携を一層強化し、災害時に迅速・的確に医療を提供できる体制を整備していくと答弁しました。

医療機関の万全な非常用電源対策を

従来から3日分の備蓄を前提とした災害対策が推奨され、医療機関には非常用電源も確保されており、当面は大丈夫だと言われてきました。しかし、今回の計画停電で、医療機器の不具合や発電可能な時間など、さまざまな課題が明らかとなりました。

そこで、発電機、非常用電源装置等の整備支援に合わせて、実際の医療提供に支障をきたさないためには、あらかじめ非常時にも電力を供給し続けるべきものと、一時停止するものなどをしっかりと把握するなど、医療が一時も滞ることのないよう、細部にわたり総点検するよう都に求めました。

都は、自家発電設備の新規整備や増設への緊急支援に合わせて、全病院を対象とした説明会にて、電源供給範囲や発電容量などの再点検を働きかけると答弁しました。

新たな地域防災力向上策を的外れ知事発言に苦言!

知事は定例会冒頭、災害時に機能する新たな仕組みを構築すると発言しました。その真意を質すと、区市町村と連帯し、向こう三軒両隣が肩を組み共助の力を再生するとのことでした。地域防災活動は、参加意欲が高い一方で、他人から強制されないことが大切と考える人も多く、そこに難しさ、悩みがあります。一方、若者が震災復興支援の募金活動を積極的に行ったり、ネットでつながった仲間でいち早く被災地に駆けつけ作業に勤(いそ)しんだりする姿が見られました。

私たちは、こうした若者の価値観、行動様式を取り入れ、既存の町会、消防団などに参加を促すための新たな方策が必要であり、別な仕組みを作っても、屋上屋を架すことになりかねないと考えます。

今後も引き続き防災力向上に効果的な取り組みを求めていきます。

島しょ地域の災害対策と港の整備を

災害対策にあたっては、それぞれの島が抱える課題があるため、きめ細かく各町村、各地域の実情を把握する必要性があります。特に、災害発生時、港は島民の生命を守る緊急避難及び応急物資や復旧用資材の輸送等に重要な役割を担っていますが、東日本大震災では、離島でほとんどの船舶が被害を受け、しばらくの間孤立を余儀なくされた状況がありました。

東京の島によっては、大きな予算を必要とせずとも、小規模な改修で、災害に強い港の整備が可能な所もあります。今回の補正予算では、離島の港湾等の災害対策も計上されているため、港の整備について都に質問しました。

都は、中央防災会議での検討結果などを踏まえ、必要な見直しを行いながら、災害に強い島しょの港の整備に努めると答えています。

小笠原諸島 世界自然遺産登録後の対策を

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世界自然遺産の登録にあたり、世界遺産委員会での正式な決定後でも、外来種対策の努力などは勧告として出される可能性は高く、それらの勧告事項に対し都としてどのような対策を講じていくのか、質しました。

都はこれまでも固有の動植物に影響を及ぼす侵略的外来種の排除に努めてきており、登録後も引き続き外来種対策を進め、国や村と連携して、勧告を踏まえた総合的な保全策を実施していくと答弁しました。

放射線量の測定拡充で都民の不安解消を図れ

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放射線に対する都民の不安が高まる中、都議会民主党は、6月3日に石原知事に対して、放射線量の測定箇所を増やすことなどを求める緊急要望を提出。都は、6月8日に放射線量の測定を都内全域で実施することを発表し、4キロメッシュで100箇所程度の測定とその情報提供が続けられています。

一方、高濃度の放射性物質が検出された下水汚泥について、東京都は「周辺環境への影響はない」と答弁するばかりです。

今後とも、都議会民主党は、都民の不安解消に向けて取り組んでいきます。

知事が考える五輪再招致はどのようなものか

石原知事は、都議会で「日本全体とスクラムを組んで東京に2020年五輪招致を考えてもらいたい」と述べました。2016年招致は、知事が提唱して始まりましたが、残念な結果に終っています。

そこで、私たち都議会民主党は、再招致を考えるならば、前回の失敗を踏まえて、推進するスポーツ界がまず積極的に取り組むとともに、都民や国民の広範な賛同が得られること、復興に取り組む被災地も理解すること、また、国と共に推進する招致としていかねばならないことが条件と考えています。

知事は、震災から復興した姿が世界からの友情の返礼になり、招致への再挑戦が次世代への夢となると述べ、各界が主体的に活動し、幅広い招致機運を醸成させ、国全体が一つとなって招致することを望んでいると述べました。

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